赤ちゃんや子どもの保湿は、朝の着替えの前と夜のお風呂のあと、この1日2回を土台にすると回しやすくなります。量はチューブから指先1本分で、大人の手のひら2枚分の広さ。全身なら、容器から小さじすりきり1杯(約4g)、3歳を過ぎたら1杯半が1回の目安です。
入浴後は早めが基本ですが、間に合わなかった夜も塗らずに終える必要はありません。医師向けの「皮脂欠乏症診療の手引き2021」には「直後でなくても良い」という言葉があります。赤みが強い、じゅくじゅくしている、かゆくて眠れないといった様子があれば、受診のタイミングです。
「お風呂上がり5分以内」は決まりではない
育児の記事でよく見かける「入浴後5分以内」。公的な資料では世田谷区の子育ての資料に見つかります。ただ、日本皮膚科学会の手引きやガイドライン、環境再生保全機構の乳幼児向けの冊子に分の数字はなく、言葉も資料ごとに違います。
| 資料 |
話の対象 |
入浴後に塗るとき |
| 乳幼児スキンケアの冊子 |
乳幼児の肌の手入れ |
水分を拭き取ったらすぐに |
| 世田谷区の資料 |
2歳の肌のかさつきの相談 |
しっとりしているうちに。5分以内が理想的 |
| アトピー性皮膚炎のガイドライン2024 |
アトピー性皮膚炎 |
速やかに。2回のうち1回は入浴直後が望ましい |
| 皮脂欠乏症の手引き2021 |
乾燥肌全般(大人を含む・医師向け) |
直後でなくても良い |
子ども向けの2つは早めを勧めています。主に医師向けで大人も含む手引きは「直後でなくても良い」という書き方です。アトピー性皮膚炎の診断がある子や、医師から塗り方の指示が出ている子は、主治医の指示に沿います。
手引きの根拠は、入浴の1分後と1時間後で肌の水分量に差がなかった大人8人の報告です。子どもでも直後と30分後で差がなかった海外の報告があるものの、1回塗って比べたものでした。日本香粧品学会誌の2014年の解説は「入浴後何分以内に塗ればいいとの十分なエビデンスがない」と指摘しています。
同じ解説は、子どもと一緒に入浴し、「入浴直後に自分はぬれたままで」塗っていた保護者にも触れています。覚えのある人には、少し肩の力が抜ける一文かもしれません。ただ、すぐ塗らないとかゆくなる人や、つっぱると感じる人もいると解説は添えます。そういう子なら早めに塗る形が合うでしょう。
つまり、塗れるなら早めに、間に合わない夜は大人が服を着てから。
朝と夜の段取りを1つに決める
回数は1日1回より2回。手引きには「1日1回だけより2回塗る方が高い保湿効果を期待できる」とあり、日本皮膚科学会のQ&Aでも2回や3回のほうが効果が得られるという説明です。では何回が正解かというと、先ほどの解説によれば解明されていません。まず2回を置く場所を決めてしまうのが早いはずです。
手引きには、本人や家族の都合に合わせて塗るよう指導するのが望ましいとあります。たとえば次の形にできます。
- 保湿剤を、脱衣所と朝の着替えを置く場所の2か所に置く
- 朝は服を脱いだところで、すねと腕を塗る
- 続けて顔と手を塗り、服を着せる
- 夜はお風呂を出たら、子どもをタオルでくるみ、大人が先に体を拭いて服を着る
- 子どもの体を拭き、おむつかパンツをはかせる
- パジャマの前に、背中とおなか、腕と足を脱衣所で塗る
大人が1人でお風呂から寝かしつけまで回す夜は、濡れたまま追いかけて塗るより、この順のほうが手元も落ち着くはずです。
とはいえ、忘れた朝も、寝かしつけで一緒に眠ってしまった夜もあります。抜けた分を次の回に足すよう求める資料は見当たりません。次の回に、いつもの量で戻せばいいのです。量が少なめだった朝も同じです。
量は手のひらで数える
出し方の目安は4つです。
| 出し方 |
量 |
塗れる広さ |
| チューブを指先から第1関節まで |
約0.5g |
大人の手のひら2枚分 |
| ローションを手のひらに1円玉大 |
約0.6g |
大人の手のひら約2枚分 |
| 容器から小さじすりきり1杯 |
約4g |
乳幼児の全身1回分 |
| 容器から小さじ1杯半 |
約6g(計算) |
3歳を過ぎた子の全身1回分 |
子どもの腕やおなかに大人の手のひらを当て、何枚分かを数えます。環境再生保全機構の冊子に載っているやり方です。
小さじは全身に塗るときの見当、指先と手のひらは腕だけや足だけに塗るときの見当で、別のものさしです。計算してもぴったりとは合いません。
毎回全身に塗ると、小さじ1杯で朝夕1日約8g、30日で約240gになります(編集部の計算)。使う目標ではなく、容器の減りが早くても使いすぎとは限らないという目安です。
塗ったあとの見た目でも確認できます。手引きは「少しテカテカする程度」、札幌市の子育て支援センターの資料は、ティッシュが皮膚に付くか、皮膚がテカるくらいを目安に挙げます。少ない量を擦り込むと皮膚を傷つける恐れがあるので、冊子のとおり、たっぷり乗せてやさしく広げ、しわは伸ばして塗ります。
市販の保湿剤はどれが効くかを比べた根拠がないと手引きは述べ、大事にするのは使用感に満足して続けられること。
塗るときに見ておきたい場所
朝と夜の塗る時間、1回の量、見ておきたい体の場所、受診を考える様子を1枚に作成: 編集部 / 出典: 日本皮膚科学会・環境再生保全機構
図の印は3種類で、出どころが違います。●は手引きが挙げる乾きやすい場所で、足の前側(すねのあたり)が中心です。背中や腕にも見られます。大人も含む話で、顔は気づきやすいぶん、すねは忘れやすいかもしれません。
◆は、乳幼児向けの冊子が塗るときや洗うときに気をつけるよう挙げる場所です。髪を分けて地肌に塗る頭、おむつのギャザーのあたり、目のまわり、それに首やわき、関節のしわ。目のまわりは避けると乾燥がひどくなることがあるそうです。よだれの多い時期は、ぬらしたタオルで拭いてから口のまわりに塗ります。
○はアトピー性皮膚炎の資料にある、湿疹が出やすい場所。赤ちゃんは顔や首、幼児はひじやひざです。はいはいから歩き始めへ、動きが変わると刺激を受ける場所も変わるからだと同じ資料は説明します。○に当てはまるからアトピー性皮膚炎だ、という意味ではありません。
湯の温度と部屋の乾燥も見直す
湯の温度なら、ガイドラインが勧めるのは38〜40℃で、これはアトピー性皮膚炎についての数字です。42℃以上は皮脂などが溶け出し、かゆみも誘うので推奨できないという判断です。
手引きは、洗うときのナイロンタオルやブラシを避けるよう求めます。乳幼児向けの冊子の勧めは、たっぷりの泡を素手で。乾燥の強い場所は石けんを最小限にという考え方も手引きにあるので、減らしてよいか迷うときは診察で聞けます。
冬は暖房で湿度が下がるので、加湿器などの対策も必要だと手引きにあります。服はごわごわした素材や羊毛を避けます。爪を短く切っておくと、かいても傷が付きにくくなります。
こう見えたら受診を考える
子どもの肌がかゆいとき、乾燥なのか、湿疹なのか、アトピー性皮膚炎なのかを家で見分ける必要はありません。次の様子が見えたら、かかりつけの小児科か皮膚科を受診するタイミングです。1
- かゆみや赤みが強い、じゅくじゅくしている
- はっきり粉をふいている、ひっかき傷があり、だんだん悪くなっている
- 保湿をしても悪くなる、湿疹のようになってきた
- 保湿剤を塗ると赤くなる、かゆくなる(使うのをやめて医師に相談)
2つ目と3つ目は、医師向けの手引きが治療を考える様子として挙げるものです。当てはまらなくても、気になるなら相談して構いません。何日様子を見ればよいかを示す公的な数字は見当たらないので、日数を待つ必要もありません。
湿疹が全身に広がった、かゆくて眠れない、全身の状態が悪いときは、日を置かずに受診を。国立成育医療研究センターは、自院の緊急受診の案内にこうした様子を挙げています。
呼びかけても反応がない、顔色や唇の色が悪いときは、迷わず119番です。熱がある、ぐったりしているときは、肌の話より先に子どもの発熱、夜や休日に受診する?迷ったときの目安と相談先へ。夜や休日に迷うときは、子ども医療電話相談の#8000に電話できます。
薬が出たら、塗る量も保湿剤との順番も医師の指示に沿います。
診察の日に肌が落ち着いていても、写真があれば悪かった日を見せられます。おむつまわりの写真は共有アルバムに入れず、診察で見せる分だけにとどめます。
園と家族に頼むとき
園で塗ってもらえるかは、園に聞くところから。乾燥肌の子について全国共通の決まりは見当たりません。アトピー性皮膚炎の子の塗り薬について、厚生労働省のガイドラインは朝夕2回家庭で塗れていれば基本的に保育所で塗り直す必要はないとします。塗り直しが要る場面に挙がるのは、重症の子でかゆみが強いときや、活発に動いたあと、プールや水遊びのあと、食後の口のまわり、外遊びのあとの手足などで、保護者の要望があるときです。
処方された保湿剤を預けたいときは、手続きも聞いておきます。保育所保育指針解説は、園が子どもに与える薬を「医師の診断及び指示による薬に限定」し、依頼票を求めています。
家族には、時間と量と場所を一言で渡します。「朝は着替えの前、夜はお風呂のあと。指先1本で手のひら2枚分。すねとしわを忘れずに」。図を保存して送っておけば、パートナーや祖父母にも同じ説明で済みます。
今夜のお風呂のあと、子どもの腕に手のひらを1枚当ててみてください。何枚分かが分かると、次に出す量が変わります。塗れなかったら、明日の朝の着替えの前から。
この記事の内容は、2026年11月6日に確認した学会、公的機関、自治体の資料によるものです。受診の判断に迷うときは、医療機関か#8000に相談してください。