水色かピンクの、フクロウのマーク。2026年12月25日に「こども性暴力防止法」が施行されると、園や学校、習いごとの案内でこの目印を見かけるようになりそうです。
保護者として出す書類や申請はありません。確認や研修を進めるのは園や教室の側。家庭では、マークの読み方と聞いてよい範囲、家で話しておくことを知っておくと落ち着いて構えられます。
こども家庭庁は11月5日、特設サイトこまもろうナビを開設し、保護者向けの案内も公開しました。
12月25日に全員の確認が終わるわけではない
園や学校、認定を受けた教室などには、3つが求められます。環境づくり、子どもと接する人の性犯罪歴の確認、おそれがあるときに業務から外すこと。
ただ、確認は一度には進みません。
学校や認可保育所などでは、新しく働き始める人は原則として仕事に就くまでに確認します。一方、すでに働いている人の申請は2027年4月以降に順次始まり、地域や施設ごとに時期が割り当てられます。期限は2029年12月24日。そのあとも5年ごとに確認し直します。園から「確認はこれから」と聞いても順番の話で、誰かに何かがあるという意味ではありません。
確認で分かる範囲にも線があります。対象は法律で定めた性犯罪の前科で、刑の執行が終わってから20年、執行猶予や罰金は10年がたつと外れます。前科のない人の行為も、この確認には表れません。だから研修や相談窓口、面談やアンケートといった日頃の取り組みも、法律は一緒に求めています。
うちの子の通う先は法律と関係あるのか
分かれ目は公立か民間かではなく、法律の上でどの事業にあたるかです。私立の学校は民間でも義務の側、公設公営の学童は公立でも認定の側です。
通う先は義務、認定、対象の外の3つに分かれ、マークと確認の時期、保護者ができることが変わります作成: 編集部 / 出典: こども家庭庁「こまもろうナビ」、こども性暴力防止法施行ガイドライン、同Q&A
| 区分 |
通う先の例 |
マーク |
| 義務 |
認可保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、小規模保育、児童館 |
ピンク(付けないこともある) |
| 認定 |
学童、認可外保育施設、一時預かり、病児保育、塾、スポーツクラブ、シッターの会社 |
認定後に水色 |
| 対象の外 |
1人で事業をするシッター、ファミリー・サポート・センター、教える人が3人未満の教室、オンラインだけの教室 |
なし |
毎日のように通う学童が「認定」の側にあるのは、少し意外かもしれません。申請は任意なので、必ず対象になるとは限らないのです。園や児童館の中で同じ運営者が行う学童や一時預かりは、ピンクだけのこともあります。来年度から使う家庭なら、学童の申し込みと入学前後の段取りを進めるついでに運営者へ聞くと一度で済みます。
習いごとは、次の5つをすべて満たすと認定を申請できます。知識や技芸を教える、6か月以上にわたり複数回行う、対面で指導する、事業者が用意した場所で行う、教える人が3人以上いる。つまり、先生が1人や2人の教室は申請そのものができません。マークがないことは、その教室を避ける理由にならないのです。
シッターは、1人で事業をしている個人なら対象の外です。マッチングサイトでも、運営者が届出をしてシッターと委託契約を結び、自ら保育を提供する形なら、認定を受けられます。
ファミリー・サポート・センターも、会員どうしをつなぐ事業なので対象の外です。使ってはいけないという話ではありません。個人のシッターに頼む前に聞いておきたいことは、病児保育とシッターの使い分けでご覧いただけます。
園や教室で働く人や、継続して指導にあたるボランティアは、保護者でも確認の対象になることがあります。
マークは2色。ないときの受け止め方
どちらも、法律に基づいて性暴力の防止に取り組む事業者が付けられる目印です。ピンクには「法定」、水色には「認定」の文字が入っています。絵はこども性暴力防止法とはで見られます。
ピンクは法定事業者マークで、学校や認可保育所など義務の側が12月25日から使えます。水色は認定事業者マーク。塾やスポーツクラブなどが、国の認定を受けたあとに付けるものです。申請は12月25日に始まりますが、審査に1か月から2か月ほどかかるので、水色を見かけるのは早くても年明けになりそうです。
逆に、マークがあれば全員の確認が済んでいる、という意味でもありません。ピンクは12月25日から付けられますが、いま働く人の確認は2029年12月24日まで続きます。水色も、認定から1年以内は確認の途中のことがあります。
水色の進み具合は、こども家庭庁のウェブサイトに載る認定事業者の一覧で見られます。認定時に働いていた人の確認が「完了」か「未完了」かの欄があり、認定から1年以内の「未完了」は期限の途中で、問題があるという意味ではありません。学校や認可保育所などの一覧も同じサイトに載りますが、確認の進み具合を公表する決まりはなく、園や学校が全員の完了後に知らせることが勧められています。一覧をいつから見られるかは、11月5日時点の資料には日付がありません。
聞いてよいのは仕組みのこと
保護者が先生の確認結果を見ることはできません。結果を見られるのは事業者の中の決まった人だけで、目的の外で使ったり第三者へ渡したりすることは原則できないからです。
では、何なら聞けるのでしょう。施行ガイドラインでは、学校や園について、聞かれる単位ごとに扱いが分かれます。
| 聞きたいこと |
ガイドラインの扱い |
| 確認の対象になる職種 |
職種ごとの開示を推奨 |
| 全員の確認が終わったか |
全員の完了後に、事業者全体での開示を推奨 |
| 特定の先生は確認済みか |
開示を控えることが望ましい |
| 犯歴があるかどうか |
開示できない(「ない」場合も) |
聞くなら上の2行です。どちらも推奨で義務ではなく、通っていない人からの問い合わせには答えない判断も認められています。事務の職員や運転手など、働き方によって対象にならない人もいます。個人の確認状況を話すだけで、周りの情報と合わせて犯歴があるかのように誤解されかねず、うわさは被害を受けた子とその家族もさらに傷つけます。
「対象の外」の教室や個人のシッターには、認定のことを聞いても答えようがありません。役に立つのは、最初の顔合わせで決めておく連絡の形です。子どもへの連絡は保護者も入る形で、とお願いしておけば、先生を疑う話にならず、誰にでも同じように頼めます。
「不適切な行為」を知ると、違和感を言葉にできる
この法律の「性暴力」は、体に直接触れることだけを指しません。盗撮や性的な姿の撮影、服の上からの接触、子どもが性的に恥ずかしいと感じて心や体に悪い影響を受ける言動も含みます。
もう1つの言葉が「不適切な行為」。それ自体は性暴力に当たらなくても、仕事に必ず必要とはいえず、続いたりエスカレートしたりすると性暴力につながるおそれがある行為を指します。例に挙がるのは次のような行為です。
- 私的な連絡先で子どもとやり取りする
- 仕事と関係なく子どもの写真を撮る
- 子どもと私的に二人きりで会う
- 必要がないのに体に触れる
- 理由なく特定の子どもばかり担当しようとする
ただし、線は一律ではありません。未就学の子と中高生では必要な関わりが違い、着替えや排泄の手助けは園の仕事の一部です。水泳やバレエ、ダンスでは、子どもや保護者の理解を得た範囲で体に触れる指導もあります。
先生を疑うための一覧ではなく、早めに「少し気になる」と言うための言葉だと考えると、持っていて楽になるはずです。
家で話しておくこと
特設サイトの「保護者の方へ」には、日頃から話しておきたい言葉が4つあります。
- 水着で隠れる部分(プライベートゾーン)と口は、自分も相手も見せない・触らせないようにしようね
- イヤな触られ方をされそうなときは、「イヤだ」「やめて」と言ってもいいんだよ
- 「イヤだ」「やめて」と言えなかったとしても、あなたは悪くないよ
- イヤなことをされたら、すぐに大人に相談してね
出典: こまもろうナビ「保護者の方へ」
いちばん持っておきたいのは3つ目でしょう。同じページによると、子どもは受け止めてもらえるかという不安や罪悪感、恥ずかしさから相談できないことがあります。言えなかったことを責めないと先に伝えておくと、あとから話す道が残ります。
一度に全部を話さなくて構いません。プールの水着を用意するときに1つ目を、というように、いつもの支度に混ぜると話しやすいかもしれません。小学生なら「こどものみなさんへ」のページを一緒に読む手もあります。ふりがな付きで、相談先も載っています。
そのページはマークを「安全な場所を証明するマーク」と紹介し、探すよう呼びかけているので、通う教室にマークがないことに子どもが気づくかもしれません。
気にかけたいサインと、話してくれたときの順番
特設サイトは「どうしたの?」と声をかける目安を挙げています。どれも例で、当てはまったから何かがあったと決まるわけではありません。
- 体では、頭痛や腹痛などの体調不良、眠れない、怖い夢を見る、食欲がない、食べすぎる、頻尿や夜尿
- 気持ちでは、元気がない、過度に元気、情緒不安定、イライラする、集中力の低下、ぼんやりする、自信をなくす、自己卑下をする
- 行動では、人と接したがらないなど人との距離の変化、体を触られることや肌を見られることを嫌がる、性的な言動が増える、反抗的になる、乱暴になる
案内にあるのも、声をかけるところまでです。特設サイトにも「身近な人でも気づきにくいもの」とあるとおり、あとから気づいても、自分を責める話にはしなくてよいと思います。
子どもが話してくれたときの順番も、案内があります。
- 「話してくれてありがとう」「あなたは悪くないよ」と伝え、疑ったり否定したりせずに聴く
- 聴き取る内容は最小限にし、子どもが自分から話すことだけを受け止める
- 保護者だけで抱え込まず、なるべく早く専門機関に相談する
2は、つい逆をしてしまいそうです。詳しく尋ねると記憶に影響するおそれがあるので、話したくないことを無理に聴き出さないように、という案内です。詳しい事情が分からないまま相談して構いません。聞いた側が動揺するのも無理はありません。
相手が園や教室の人でなくても、順番と相談先は同じです。この法律が対象にするのは教育や保育の事業者で、親族や近所の人などは入りません。
| 相談先 |
番号 |
受け付けること |
| 児童相談所 |
189 |
子どもへの性的虐待などの相談を24時間 |
| ワンストップ支援センター |
#8891 |
性暴力の被害者支援の総合窓口。医療、法律、心理の専門家と連携 |
| 性被害相談電話(警察) |
#8103 |
かけた場所を管轄する都道府県警察の相談電話につながる |
| 24時間子供SOSダイヤル |
0120-0-78310 |
子どもや保護者の悩みを夜間や休日も受ける(文部科学省)。どこに相談するか迷うときにも |
今まさに危険があるときは110番です。園や教室の窓口に言いにくいときは、外の窓口へ直接相談して構いません。法律の対象になる事業者には外部の窓口の周知も義務づけられ、相談を理由に不利益な扱いをしてはならないとされています。
施行の前後に家庭で確認すること
- 子どもの通う先を書き出し、図の3つの区分に分ける
- 園や学校からお知らせが届いたら、相談窓口と不適切な行為の決まりを写真に撮っておく
- 学童と習いごとには、送迎のついでや連絡帳で、文例から1つだけ聞く
- 相談先の番号を家族のスマートフォンに登録する
- 話してくれたときの順番を、パートナーや祖父母、シッターなど子どもを見てくれる人にも伝える
全部を今週に詰め込まなくて大丈夫。1つだけ選ぶなら4番目を。番号を探さずに済むだけで、いざというときの動きが1つ減ります。
制度の内容は、2026年11月5日時点のこども家庭庁の発表と資料で確認しています。