RSウイルスかどうかを、家で見分ける方法はありません。始まりは熱や鼻水で、ほかの風邪とよく似ているからです。見ておきたいのは熱の高さより、そのあと数日のうちに、せきと息がどう変わっていくか。
厚生労働省のQ&Aが示す受診の目安は、「機嫌がよく、辛そうでなければ、慌てずに様子をみたり、かかりつけ医にご相談ください」。ただし「呼吸が苦しそう、食事や水分摂取ができない時は医療機関への受診をご検討ください」としています。唇の色が紫色のときや苦しそうな呼吸のときは、消防庁の救急受診ガイドでは年齢にかかわらず119番です。受診を迷うときや夜間と休日の相談先は、子ども医療電話相談の#8000です。
最初の数日は、風邪と同じに見える
RSウイルスは、ほとんどの子が一度はかかるウイルスです。厚生労働省のQ&Aによると、1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の子が、少なくとも1度は感染します。
うつってから症状が出るまでは2〜8日で、多くは4〜6日。最初は熱や鼻水が数日続き、ここまではほかの風邪と並べても違いが見えません。
でも、軽く済むか重くなるかの分かれ目は、その先にあります。Q&Aによれば、初めてかかった乳幼児のうち、鼻水などの症状だけで数日のうちに軽くなるのは約7割。残りの約3割は、せきがひどくなり、ゼーゼーという音(喘鳴)や呼吸困難が出てきます。重い場合は、細気管支炎や肺炎に進むことも。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の解説には、熱について見落としやすい一文があります。初めのころによく出る熱も、入院するころには38℃以下に下がっているか、なくなっていることが多い、というのです。続くせきや強くなっていくせきは、気管支や肺のほうへ病気が進んでいることをうかがわせるサインだそうです。
つまり、熱が下がったから峠を越えた、とは限りません。治るまでの期間は通常7〜12日。そのあいだは熱の数字より、きのうと比べたせきと息を見ておくと、変わり目に気づきやすくなります。
重くなりやすいのは生後6か月まで
同じウイルスでも、重さは月齢で大きく変わります。厚生労働省のQ&Aは、生後6か月以内にかかると細気管支炎や肺炎などに重くなる場合があるとし、JIHSの解説では、入院がいちばん多いのは生後2〜5か月です。
厚生労働省のワクチンのページは、2010年代には2歳未満の子が毎年12万〜18万人、RSウイルス感染症と診断され、そのうち3万〜5万人が入院を要したとしています。
Q&Aが、感染に特に注意が必要な子として挙げるのは次のとおりです。
- 生後6か月以内の赤ちゃん
- 早産で生まれた子
- 生後24か月以下で、心臓や肺に病気がある子
- 神経や筋肉の病気、免疫不全がある子
持病のある子なら、流行期の過ごし方や受診の仕方を、すでに主治医から聞いている家庭も多いでしょう。主治医の指示があるときは、それがいちばんの目安です。
熱より、せきと息の変わり方を見る
家で見るところは、息とせき、飲む量、おしっこ、それに機嫌の5つ。どれも物差しは「普段と比べてどうか」です。消防庁の救急受診ガイドで「こども」の「せき」を選んだときに聞かれるのも、熱の高さではなく、この普段との違いでした。1
息は子どもが眠って落ち着いているときがいちばん見やすいでしょう。胸とおなかの上下が普段より浅く速くないか、息をするときにゼーゼー、ヒューヒューと音がしないか。東京都大田区の案内でも、呼吸が速い、息苦しそうにしている、肩や全身を使って息をしている、顔色が悪い、元気がない、といった様子は早めの受診をすすめる目安です。ガイドが聞くのは「普段と比べて」なので、元気な日の寝息の速さや音を一度見ておくと、比べる相手ができます。
せきは回数より「何ができなくなったか」で見ると、ガイドの質問に答えやすくなります。横になれない、話ができない、せきがひどくて眠れない、せき込んで吐いた。こうした変化は、どれもガイドで急ぐ側の答えにつながります。
飲む量とおしっこは、入る量と出る量なので、いつも一緒に見ます。たとえば赤ちゃんなら、授乳やミルクの回数と1回の飲み方、それにおむつの重さ。ガイドでは、水分を十分にとれない(飲む量や回数が減っている)ときと、おしっこの量や回数が減ったり色が濃くなったりしたときは、1歳以上なら2時間以内をめやすに受診、1歳未満ならいますぐ119番の答えです。Q&Aの「食事や水分摂取ができない時」とも重なります。
機嫌はQ&Aがいちばん初めに置く物差しです。普段の顔が見えていて辛そうでもなければ、慌てずに様子をみるか、かかりつけ医に相談する段階。ただ、機嫌がよく見えても、呼吸が苦しそうなときや食事や水分がとれないときは、Q&Aも受診を検討するよう呼びかけています。
せきと息、飲む量とおしっこで見る急ぐ度合い。せきのある1歳未満は同じ様子でも一段急ぐ作成: 編集部 / 出典: 総務省消防庁・厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
せきがある1歳未満は、一段急ぐ答えに
では、どの様子ならどこまで急ぐのでしょう。消防庁のガイドの答えは、急ぐ順に3つあります。「いますぐ救急車を呼びましょう」、2時間以内をめやすにした「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」、夜間なら翌日の診察でもかまわない「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」。どれにも当てはまらなければ「引き続き、注意して様子をみてください」で、家で経過をみるか、ふだんの診療時間に受診する段階です。症状が悪くなったり、変わらずに続いたり、ほかの症状が出たりしたら、受診を考えるよう添えてあります。
唇の色が紫色、浅い呼吸か苦しそうな呼吸、せきがひどくて横になれない・歩けない・会話できない、声がかすれてほとんど聞こえないか話ができない。この4つは年齢にかかわらず、いますぐ119番です。せきの前に何かを口に入れていたときや、せきと一緒に多量の血が出たときも、答えは同じ119番です。
その下の段からは、年齢で答えが変わります。ガイドは途中で「1歳未満ですか?」と聞き、1歳未満なら一段急ぐ答えを返します。当てはまるのは、まず息の変化。普段と比べて浅く速い呼吸、ゼーゼーやヒューヒューという音、立て続けのせきのあと息を吸うと笛のような音です。せきがひどくて眠れない、せき込んで吐いた、犬が吠えるような変なせき、胸を痛がる、それまで何もなかったのに突然始まった、も同じ段。飲む量やおしっこの減りも入ります。こうした様子は、1歳以上なら2時間以内をめやすに受診、1歳未満ならいますぐ119番です。痰のからむせきや、鼻水や鼻づまりもあるせき、食欲がないときは、1歳以上なら夜間は翌日の受診でもよく、1歳未満は2時間以内をめやすに受診、となります。
1歳未満なら、鼻水のあるせきでも2時間以内をめやすに受診。Q&Aの「機嫌がよく、辛そうでなければ、慌てずに」より早めの答えですが、2つは役割が違います。Q&AはRSウイルス感染症について広く一般に向けた案内で、ガイドはせきの様子から、救急車を呼ぶか、いつ受診するかを決める質問の流れ。そのQ&Aも、生後6か月以内の赤ちゃんは重くなる場合があるとして、特に注意が必要な子に挙げているのです。
1歳未満でせきが出はじめ、どちらで考えればよいか迷うときは、昼ならかかりつけ医、夜間や休日なら#8000に相談できます。症状を選ぶ前の共通の4つの質問(声が出るか、息が苦しそうか、顔色、受け答え)は、子どもの発熱、夜や休日に受診する?迷ったときの目安と相談先で確認できます。
迷ったら#8000、伝えるのは息の様子
#8000は夜間や休日に子どもの症状で迷ったとき、小児科医師や看護師に相談できる番号です。受付の時間は都道府県によって違います。
電話で見たままを言葉にするのは、意外と難しいもの。とくに息の音や胸の動きは、どう言えば伝わるか迷いがちです。熱の時刻や飲んだ量を書く受診メモの見本は、上の発熱の記事で見られます。RSウイルスの流行期は、そこに次の息の項目を足しておくと、相手に伝わりやすいでしょう。
急ぐ様子がないときに限り、ゼーゼーという音や胸の動きを短い動画に撮っておく手もあります。受診先で見たままを見せられます。唇の色が紫色のときや苦しそうな呼吸のときは、撮るより先に119番です。
流行の時期に家族でできること
流行の時期は以前と変わってきました。厚生労働省のQ&Aによると、RSウイルス感染症は近年、夏から増えて秋にピークがありましたが、2021年以降は春から初夏に増え続け、夏にピークが来るようになりました。ただ、厚生労働省のワクチンのページによると、流行期は年や地域によってさまざまです。2026年は秋に入って報告が増え、JIHSの感染症週報では第41週(10月5日〜11日)の全国の報告が定点当たり1.42と、過去5年の同じ時期の平均よりやや多くなりました。第42週(10月12日〜18日)は1.09に減りました。2
上の子がいる家庭では、上の子から赤ちゃんへの流れに気をつけたいところです。JIHSの解説によると、RSウイルスは家族の中で効率よく広がり、乳幼児と年長の子がいる家族では、流行の期間中に家族の44%が感染したという報告もあります。家に持ち込むのは多くの場合、軽い鼻かぜ程度の学童期の子です。保育所のガイドラインによると、2歳以上で再びかかった子は軽いせきや鼻水だけで、普段どおり園に通っている場合もあります。
だから、うつってもだれのせいでもありません。Q&Aも、RSウイルスだと気づかれていない年長の子や大人がいることを挙げたうえで、症状がある間はできるだけ乳幼児との接触を避けることが、発症の予防につながるとしています。家でできることは、次の4つです。
- 上の子や大人にせきや鼻水がある間は、できるだけ赤ちゃんとの接触を避ける
- 帰ってきたら、上の子と大人が先に流水と石けんで手を洗う
- 赤ちゃんがなめるおもちゃや手すり、ドアノブを、アルコールや塩素系の消毒剤でこまめに拭く
- せきや鼻水のある大人と、マスクができる年齢の子はマスクを着ける
予防の手段も2つあります。2026年度から、妊婦へのRSウイルスワクチンが予防接種法の定期接種になりました。対象は接種する時点で妊娠28週0日から36週6日までの人で、接種は1回です。厚生労働省は、妊娠中の接種で、生まれた赤ちゃんのRSウイルスによる肺炎や気管支炎などへの予防効果が認められているとしています。もう1つは、生まれたあとの赤ちゃんに注射する予防の薬(モノクローナル抗体製剤)です。重いRSウイルス感染症になるおそれが高い赤ちゃんに限って医療保険が使え、定期接種ではありません。対象になるか、受けるかどうかは、産科の医師や主治医と相談して決めることです。
かかったあと園に戻る目安は、保育所のガイドラインでは「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」。登園届の要否は園や地域で違い、保育園の呼び出しが多い1年目に、お迎えの順番表を30分ほどで作る手順でほかの病気の目安と並べて見られます。
RSウイルスかどうかは、家で決めなくてかまいません。決めるのは、どこまで急ぐかだけ。きのうと比べたせきと息、飲んだ量とおむつ、機嫌を見ておけば、ガイドの質問にも#8000の電話にも答えられます。せきのある1歳未満なら、答えはひとつ早めです。
この記事の内容は、2026年11月3日に確認した厚生労働省(Q&Aは2026年4月27日改訂)、総務省消防庁、国立健康危機管理研究機構、こども家庭庁、大田区の情報によるものです。受診の判断に迷うときは、医療機関か#8000に相談してください。