受けられるがん検診の種類は年齢で決まり、健康診断の窓口は働き方と健康保険で分かれます。国の指針では子宮頸がん検診が20歳から、乳がん検診が40歳からで、細胞診の子宮頸がん検診と乳がん検診は2年に1回、基本の窓口はお住まいの市区町村です。パートか扶養内か自営かの違いは、主に健康診断の窓口に出ます。
子どもの予防接種の時期は覚えていても、自分の検診の順番までは手が回らない。案内の届き先が市区町村、勤め先、健康保険の3か所に分かれていれば、なおさらです。2025年の国民生活基礎調査から計算すると、過去2年間に子宮頸がん検診を受けた女性は30〜34歳で50.6%、35〜39歳で52.5%1。およそ半数は受けていないことになり、受けていない人は珍しくありません。
がん検診は年齢、健康診断は働き方で分かれる
がん検診と健康診断は、実施する主体が別です。がん検診は市区町村、定期健康診断は事業者、特定健診は健康保険の保険者が担います2。ですから、勤め先の健康診断を受けても、がん検診まで済んだとは限りません。国立がん研究センターも、事業者や保険者によるがん検診の実施は「任意」だと説明します。
年齢で受けられるがん検診を見て、働き方と健康保険の枝で健康診断の窓口をたどるチャート作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省
上の段で年齢の行を見つけ、下の段で働き方の枝をたどると、自分の窓口に着きます。
受けた先が分かれていることは、数字にも表れます。同じ調査で子宮頸がん検診を受けた30〜44歳の女性の受診先は、勤め先や健康保険組合などが41.6%、市区町村が28.6%、その他が29.7%でした1。どこか1か所の案内を待つだけでは、声がかからない人も出てくるのでしょう。
子宮頸がん検診は20歳から2年に1回
子宮頸がん検診は何歳から受けられるのか。答えは20歳です。国の指針の対象は20歳以上の女性で、細胞診を2年に1回受けます。子宮の入り口の細胞をブラシやヘラでこすって採り、顕微鏡で調べる検査です。
30歳になると、方法が2つに分かれます。もう1つのHPV検査単独法は2024年度に指針へ加わった方法で、30歳以上が原則5年に1回受けます。指針は、30歳から5歳刻みの節目年齢で受ける形を勧めています。陽性のときだけ同じ検体で細胞診に進み、そこで異常がなければ翌年度にもう一度HPV検査を受ける流れです。20代は陽性になる割合が高いわりに子宮頸がんにかかる人が少なく、厚生労働省のQ&Aはこの方法を勧めていません。
どちらを受けるかは、自分では選べません。指針は30歳以上の検査方法を市区町村の中で原則そろえるとしていて、導入するかどうかも市区町村ごと。たとえば横浜市は、30〜60歳の女性にHPV検査、20〜29歳と61歳以上の女性に細胞診を用意しています。
5年は長く感じるかもしれません。それでも、厚生労働省のQ&Aは、陰性だった人が次の節目より早く受けることを勧めていません。必要以上に受けると、不利益が利益を上回るおそれがあるからです。
30代の乳がん検診は指針の対象に入らない
国の指針で乳がん検診の対象は40歳以上の女性で、30代は入りません。厚生労働省によると、対象年齢より若い世代はがんにかかる人が少なく、検診の有効性も確認されていないためです。
もっとも、乳がんにかかる人は30代後半から増えていきます。そこで指針は30代の女性にブレスト・アウェアネスを伝えるよう市区町村に求めています。乳房を意識する生活習慣のことで、入浴や着替えのついでに見て触り、「いつもと変わりがないかな」と気にかける程度のもの。しこりを探す自己触診とは別物で、変化に気づいたら次の検診を待たずに医師へ相談します。
勤め先の案内で受けている30代の女性もいます。2025年の調査で過去2年間に乳がん検診を受けた女性は30〜34歳で25.1%、35〜39歳で33.5%で、受けた30代の60.1%は勤め先や健康保険組合などの検診でした1。
ややこしいのは、案内に載る検査が指針と同じとは限らない点でしょう。厚生労働省の調査によると、2023年度に乳がん検診をした1,733市区町村のうち、715か所(41.3%)が超音波検査を、331か所(19.1%)が視触診を取り入れていました。一方、国立がん研究センターの説明では、どちらも「乳がんで亡くなることを防ぐ科学的根拠が不十分」で、推奨されていません。指針も視触診は推奨しないとしています。また指針は、検診の利益と不利益を考えたうえで受けるかどうかを検討するのが望ましいとしていて、不利益には偽陽性や過剰診断などが挙げられます。案内の検査がどれに当たるかを見て、迷ったら窓口や医療機関に相談して決めることになります。
40歳で受けられる検診が増える
40歳になると、国の指針にある検診が一度に増えます。乳がん検診はマンモグラフィで2年に1回、肺がん検診と大腸がん検診は年1回。胃がん検診は50歳からですが、エックス線検査は当分の間、40歳からでも差し支えないとされます。
2027年4月からは、結果の通知も少し変わります。2026年10月に改正された指針で、乳がん検診の結果に乳房構成を添えることになりました。始まる時期は自治体ごとで、準備が整ったところから順にという扱いです。
「高濃度」とあると驚くかもしれません。乳腺組織が豊富で、マンモグラフィに白っぽく写るタイプのことです。厚生労働省のQ&Aによると、乳房構成は病気ではなく、高濃度でも直ちに追加検査や治療が要るわけではないとのこと。ただし、マンモグラフィの感度が低い傾向があることや、乳がんのリスクが高くなることは知っておくよう求めています。
国の指針と市区町村の検診は同じではない
指針は全国共通の物差しですが、実際に受けられる条件は市区町村で違います。先ほどの調査では、子宮頸がん検診の細胞診を1年に1回受けられる市区町村が40.0%あり、指針どおりに原則2年に1回とする39.6%と並んでいました。
受けられる年度の決め方も同じではありません。名古屋市は前年度に市の検診を受けていない人、神戸市は偶数歳の誕生日を迎える年度の人が対象です。
勤め先との関係にも違いがあります。国立がん研究センターは「基本的に住民検診は規定年齢で対象となる人はどなたでも受診可能です」と説明しますが、横浜市や名古屋市、目黒区は、勤め先などで同じ検診を受けられる人を対象から外しています。杉並区は職場でがんの種類によって受けられないなら区の検診を使えるとしています。
費用の差も小さくありません。2026年度の自己負担は、3市の例で次のとおりです。
| 市 |
子宮頸がん |
乳がん |
| 名古屋市 |
500円 |
500円 |
| 横浜市 |
1,360円、HPV検査は2,000円 |
680円 |
| 神戸市 |
1,700円 |
40代は2,000円 |
子宮頸がん検診で比べると、名古屋市と神戸市には3倍以上の差があります。同じ調査では、医療機関で受ける子宮頸がん検診を全員無料にしていた市区町村は18.4%、全員に自己負担があったのは9.7%で、残る71.8%は年齢や所得などで一部の人を無料にしていました。
無料クーポンは20歳と40歳が基本
国の支援事業をもとに市区町村が配る無料クーポンは、子宮頸がん検診が20歳、乳がん検診が40歳の女性を基本にしています。福岡市と鹿児島市の2026年度の例なら、2005年4月2日〜2006年4月1日生まれと、1985年4月2日〜1986年4月1日生まれの人です。
対象を広げる市もあります。名古屋市は子宮頸がん検診が20〜40歳、乳がん検診が40〜60歳の、どちらも5歳刻み。30歳と35歳の人にも届きます。しかも対象の年齢なら「会社等で検診を受ける機会があっても」無料で受けられます。
有効期限は名古屋市、福岡市、鹿児島市とも2027年3月31日まで。鹿児島市は紛失しても再発行できるので、封筒が見当たらないときも窓口に聞いてみる価値があります。
パートの定期健診は週の時間で決まる
勤め先の定期健康診断の対象かどうかは、パートという呼び名ではなく、契約期間と週の労働時間で決まります。厚生労働省の案内によると、対象は無期の契約か1年以上の契約(更新の見込みを含む)で、1週間の労働時間が同じ業務に就く通常の労働者の4分の3以上の人です3。正社員が週40時間の職場なら、週30時間以上が目安になります。
契約の条件を満たしていれば、4分の3に届かなくても、おおむね2分の1以上で実施が望ましいとされます。自分の条件は、雇用契約書や労働条件通知書の契約期間と所定労働時間で確認できます。対象なら、費用は事業者が負担します。
図の3段目の数字は、2025年の調査で働いている20歳以上の女性に過去1年間の健診を聞いたものです1。この調査の「勤め先等」には健康保険組合や家族の勤め先も入るので、パートの58.4%は本人の勤め先の定期健診だけの割合ではありません。
過去1年間に健診や人間ドックを受けなかった30代の女性に理由を聞くと(複数回答)、「時間がとれなかったから」が34.6%、「費用がかかるから」が30.0%と上位に並び、「知らなかったから」は4.9%でした1。働いていない人も含む数字ですが、知らなかったという人より、時間や費用を挙げる人が目立ちます。
会社の側の手配は、姉妹サイトのベンチャー・スピリット!の定期健康診断の手配 受診日のあとの仕事から逆算する1年の段取りが担当者向けに扱っています。
扶養内は40歳から受診券で特定健診
勤め先の定期健診の対象でなく、家族の扶養に入っているなら、窓口は扶養に入っている先の健康保険です。40〜74歳は保険者の特定健診の対象で、協会けんぽなら例年4月ごろ、被保険者の住所に受診券が届きます。パートの勤め先からは案内が来ないので、見落としやすいかもしれません。
39歳までは、入っている健康保険しだいです。国の資料では40歳未満の健診は保険者の努力義務なので、家族向けの健診があるかどうかは加入先の案内で見ます。協会けんぽは2027年度から、被扶養者の健診を本人向けと同じ内容に広げる予定です。
自分の名前で勤め先の保険に入っていても定期健診の対象でなければ、保険者の健診が窓口です。協会けんぽは2026年度から、本人向けの生活習慣病予防健診に20歳、25歳、30歳を加えました。
39歳までの健診を市区町村が用意していることもあります。京都市なら18〜39歳で3,000円。ただし、勤め先で健康診断を受けられる人や学生、妊婦は使えません。
自営とフリーランスは国保の健診が入口
国民健康保険なら、40〜74歳は国保の特定健診が窓口です。39歳までは市区町村の取り組みしだいで、鹿児島市は30〜39歳の国保加入者に500円の若年者健診を用意しています。2025年の調査では、働いている女性のうち自営業主の35.3%が市区町村の健診を受け、39.5%は健診や人間ドックを受けていませんでした1。
自営やフリーランスには、健診を用意する勤め先がありません。厚生労働省が2024年に示したガイドラインは、個人事業者に1年に1回の健康診断を求め、発注する側には受診の時間を確保するなどの配慮を挙げています。打ち合わせの日を動かしたいときの手がかりになるでしょう。妊娠中なら、フリーランス法の配慮の例に、妊婦健診の日の打ち合わせの調整が入っています。申し出れば、6か月以上続く仕事では発注側の義務、それより短い仕事では努力義務です。4
育休と妊娠と授乳の時期に見ておくこと
東京労働局のQ&Aによると、定期健診の時期に産休や育休の最中なら事業者は実施しなくても差し支えなく、休業が終わったら速やかに実施します。市区町村のがん検診は住まいで受けるものなので、条件が合えば育休中でも使えます。勤め先に機会がある人を対象から外す市区町村では、育休中の扱いを窓口で聞いておくと確実です。
妊娠中は国の告示で、妊婦健診に「子宮頸がん検診(細胞診)」が妊娠初期に1回入っています。国立がん研究センターは、妊娠中の検査は望ましくなく、受けるならごく初期がよいと説明していて、妊婦健診の細胞診はこの時期に当たります。気になることは事前に医師に相談してください。
授乳中のマンモグラフィは、市区町村の条件を見るのが近道です。目黒区は授乳中と断乳後3か月未満の人、練馬区と杉並区は授乳中と断乳後6か月以内の人を、受けられない人としています。
授乳中の検診を全国で決めた基準は、国の指針にありません。妊婦健診の結果をがん検診の受診歴に数えるかどうかは、確認できませんでした。杉並区は前年度か同年度に同様の検診を受けた人を対象外とするので、母子健康手帳の日付を手元に窓口で聞くと話が早いでしょう。
3月末までの予約の段取り
年度末までに受けたいときは、次の順に進めると迷いません。
- お住まいの市区町村のサイトで「がん検診」のページを開く。
- 2026年度の対象かどうかと、自己負担を確認する。
- 勤め先と保険者の案内に、同じ検診が入っているかを見る。
- 受ける窓口を1つ決める。
- 締切と定員を確認して予約する。
ただ、締切は3月末とは限りません。目黒区の乳がん検診は受診券の申し込みが2月15日必着で、受診は2月28日まで。厚生労働省の調査では、2023年度に乳がんの集団検診をした1,620市区町村のうち64.4%が定員を設けていました。だから、締切の直前に探すより、2か月ほど前に枠を押さえるほうが選べる日は多いはずです。
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この記事の制度と数字は2026年11月時点のもので、2026年11月2日に確認しました。費用や条件は年度ごとに変わることがあるため、受ける前にお住まいの市区町村と加入している保険者の案内で確認してください。