「言ってくれればやるのに」と「言わないとやってくれない」。家事分担の話し合いがこじれるとき、すれ違っているのは家事の量よりも、相手から見えていない家事のほうかもしれません。
けんかにしない近道は3つです。話し合いの前に家事を書き出すこと、担当を「作業」ではなく「最初から最後まで」で持つこと。そして週に1回、10分だけ見直すことです。
どちらも忙しいから、仕組みで分ける
偏りそのものは、調査の数字にもはっきり表れていました。総務省の社会生活基本調査(2021年)では、6歳未満の子がいる共働きの夫婦が家事や育児、買い物などに使う時間は、平日と土日をならした1日平均で妻が6時間31分、夫が1時間54分でした。内閣府の男女共同参画白書(令和5年版)も、同じ調査の平日の数字から「家事関連時間は妻、仕事時間は夫に偏っている」と書いています。週全体で見た妻の分担割合は、白書の計算で77.4%です。
ただ、夫の側に時間が余っているわけでもありません。同じ調査で平日だけを見ると、共働きの夫の仕事と通勤は合わせて10時間を超えます。2人とも手いっぱいの中で「気づいた人がやる」に任せていると、家にいる時間が長いほうや、先に気づくほうに家事が寄っていくのも当然でしょう。
だから、話し合いはどちらがどれだけ頑張っているかの比べ合いにしないほうがうまくいきます。家の仕事を一度ぜんぶ机に出して、置き場所を決め直す。そのくらいの気持ちで始めると、言葉もとがりにくくなります。
子どもの年齢による違いや、共働きと片働きの比較は、データで見る共働き子育て家庭の1日 夫と妻の時間はどこが違うかで詳しく取り上げました。
名もなき家事を書き出す手順
名もなき家事は、名前がつかないほど細かいのですが、だれかがやらないと止まってしまう家事のことです。トイレットペーパーの補充、保育園の着替えの名前つけ、出しっぱなしのタオルを洗濯かごへ戻すこと。こうした家事は、やっている本人にしか見えていないことがよくあります。
切り出すときは、責める話ではないと先に伝えておくと、相手も構えずに座れるはずです。
書き出しは、次の順で進めます。
- 紙かスマートフォンのメモを、1人に1つずつ用意する。
- 相手のメモを見ずに、平日の朝起きてから寝るまでの家事を順に書く。
- 週に1回のもの、月に1回のもの、年に数回のものを書き足す。
- 2人のメモを並べ、片方にしか書かれていない家事に印をつける。
- 書き出した家事を、ゴミや洗濯、夕食のような「まとまり」に分ける。
手順の中で外せないのが、2の「相手のメモを見ずに」。一緒に書くと、先に口を開いたほうのリストになりがちです。別々に書いてから並べると、自分にだけ見えていた家事と、相手が黙ってやっていた家事の両方が出てきます。印がついたものが、その家の名もなき家事です。
ここで、だれが何分やっているかまでは数えません。時間を比べると、話は「どちらが大変か」の勝ち負けに流れます。見るのは抜けていた家事と、まだ担当のいない家事だけで十分。
| まとまり |
中に入っている名もなき家事 |
| ゴミ |
ゴミ箱を集める、分別、袋の補充、収集日の確認 |
| 洗濯 |
干す、たたむ、しまう、洗剤の補充 |
| 夕食 |
献立を決める、在庫を見る、買い物リスト、片づけ |
| 園の持ち物 |
着替えの補充、名前つけ、連絡帳、行事の持ち物 |
| 子どもの予定 |
健診や予防接種の予約、園の書類、習いごとの連絡 |
| 日用品 |
残りの確認、注文、受け取り、しまう |
表はあくまで見本です。わが家にしかない家事、たとえばペットの世話や実家との連絡も、遠慮せずにまとまりとして足してください。
名もなき家事の書き出しシートの見本と、分担を決める5つの手順作成: 編集部 / 出典: mamedia編集部
担当は「作業」ではなく「最初から最後まで」で持つ
ゴミ出しを例にすると、違いが分かりやすいはずです。「ゴミ出し」を作業として頼むと、担当するのは集積所まで袋を運ぶところだけになります。けれど実際のゴミの家事は、各部屋のゴミ箱を集め、分別し、新しい袋をかけ、袋が切れる前に買い足し、収集日を覚えておくところまで続いていますよね。
作業だけを渡すと、残りの「気づく」「決める」「補充する」は、渡した側の手元に残ります。頼む側は、そのたびに声をかける役を続けることになります。「言わないとやってくれない」と感じる理由は、案外ここにあるのかもしれません。
まとまりで持つと、この役ごと移せます。保育園の持ち物を担当するなら、着替えの補充だけでなく、名前つけ、サイズが合わなくなった服の入れ替え、行事の持ち物の確認まで。夕食なら、献立と買い物リストまでを一つとして持つ形です。
分け方に正解はありません。平日の夕方に家にいるほうが夕食と園の準備を持ち、帰りが遅いほうは日用品の注文や子どもの予定の管理など、時間を選べるまとまりを持つ。そんな分け方もあります。たとえば、週末の下ごしらえも時間を選べる家事の代表です。60分の段取りは、平日の夕食が回る週末1時間の下ごしらえ 献立の型と作り置きの保存に載せました。
とはいえ、やり方に口を出したくなる気持ちも自然なもの。でも、たたみ方の違いを直されるたびに、相手は「これは自分の担当ではない」と感じていきます。多少のやり方の違いは、引き受けてもらったことと引き換え。そう考えると、少し気持ちが楽になります。
頼むときの言い方の文例
頼み方ひとつで、同じお願いが「責められた」にも「相談された」にも聞こえます。避けたい言い方は2つ。理由を問う言い方と、終わりの見えない頼み方です。
| 場面 |
避けたい言い方 |
伝わりやすい言い方 |
| 気づいてほしい |
「なんで気づかないの?」 |
「園の着替え、残り1組だった。補充もお願いしていい?」 |
| 途中で止まっている |
「洗濯、中途半端なんだけど」 |
「干してくれてありがとう。しまうところまでを洗濯にしてもらえると助かる」 |
| 急ぎで頼む |
「これ、やっといて」 |
「明日の朝7時までに、申込書に名前を書いて青いファイルに入れてほしい」 |
| 引き受ける側から |
「言ってくれればやるのに」 |
「どこまでやったら終わりにしていい?」 |
「なんで」は理由を聞く形なので、言われた側は言い訳を探し始めてしまいます。一方で、事実と頼みたいことだけを伝えれば、話は次の行動に進みやすくなるでしょう。
途中で止まっているときは、できたところに先にお礼を言い、どこまでが一つの家事かを言葉にします。急ぎのときは、いつまでに、何を、どこまで。この3つがそろうと、頼まれた側は迷いません。
最後の行は、頼まれる側の言い方です。話し合いは、頼む人だけのものではありません。「言ってくれればやる」を「どこまでやれば終わり?」に言い換えるだけで、相手に指示を出させる役から、自分で終わりを決める役に変わります。
週1回10分の見直しの進め方
決めた分担は、そのままでは続きません。出張が入る週、子どもが熱を出す週、園の行事が重なる週。家の予定は毎週変わるので、分担も小さく直し続けるものだと考えて始めると気が楽です。
見直しは週に1回、10分だけ。長くすると、先週の不満の言い合いになりやすいからです。議題は、先週止まった家事、来週増える家事、入れ替える担当の3つに絞ります。
議題が3つだけなら、その外の話を持ち込まずに済むでしょう。あわせて、月に1回は最初のリストを見直し、増えた家事を書き足します。子どもが歩き始めた、園が変わった、習いごとを始めた。家事はそのたびに増えたり、形を変えたりするものです。
繁忙期で一時的に家事を持てないときは、「今月の末まで」のように期間を決めて相手に預けます。終わりが見えていると、預ける側も預かる側も引き受けやすいものです。
冷蔵庫の横に貼った1枚のリストが、すぐに家事を減らしてくれるわけではありません。それでも、「言った」「言わない」の言い合いが、「どこで止まったか」の相談に変わっていく。その変化こそ、書き出して話し合ういちばんの成果だと思います。
調査の数字は2026年10月30日に確認しました。