平日の夕食を回すいちばんの近道は、毎日「何を作るか」を考えないことです。献立は曜日ごとの型で決めておき、週末に1時間だけ下ごしらえをする。作り置きは「何日もつか」ではなく「いつ食べるか」から考えて、冷蔵と冷凍に分けます。
夕方の時間は、思っている以上に短いものです。内閣府の男女共同参画白書(令和5年版)によると、末子が6歳未満で妻がフルタイムで働く共働き世帯では、平日の妻の帰宅が平均17時46分、夕食を食べ始めるのが平均19時03分でした(2021年)。平均の時刻どうしを並べると、その間は1時間17分ほど。お迎えも着替えも、お風呂の支度も、この中に入ってきます。
献立は曜日ごとの「型」で決める
献立に毎日迷うのは、選べるものが多すぎるからです。そこで役に立つのが、主菜の作り方を曜日ごとに決めておくやり方です。「月曜は焼くだけ」「火曜は温めるだけ」と型が決まっていれば、考えるのは中に入れる食材だけ。
型の土台にしたいのが、国の食生活指針にある「主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という考え方です。ごはんや麺の主食に、肉や魚、卵、大豆製品の主菜、野菜やきのこ、海藻の副菜。この3つがそろえば、品数が少なくても献立の形になります。
同じ指針には「手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせましょう。」という一文も入っていました。毎日すべてを手作りしなくていい。読んでいて、少し肩の力が抜けました。
| 曜日 |
主菜の型 |
週末にしておくこと |
| 月 |
焼くだけ |
肉に下味をつけて冷蔵 |
| 火 |
温めるだけ |
煮込みを小分けして冷凍 |
| 水 |
炒めるだけ |
下味をつけた肉を冷凍 |
| 木 |
丼か麺 |
切った野菜を冷凍 |
| 金 |
組み合わせる日 |
なし |
表の中で、冷蔵は月曜の1行だけです。週末の準備のうち冷蔵に置くのは翌日に食べる分にとどめ、火曜からは冷凍した分に切り替えます。木曜は、冷凍した野菜と卵や豆腐で丼か麺にする日。金曜は冷凍の残りに、買ってきたお惣菜や外食を組み合わせる日にしておくと、疲れが出る週の終わりに無理をせずに済みます。
副菜は「汁物を1つ」と決めておくと楽です。切っておいた野菜をだしやスープに入れるだけで、野菜の一品になります。とはいえ、子どもが食べる量は年齢や体格で違うもの。何をどれだけ食べるとよいかの目安なら、厚生労働省と農林水産省が決めた「食事バランスガイド」が手がかりになります。
週末1時間の下ごしらえの段取り
週末の60分は、次の順番です。
- (0分)献立表を見て、使う食材を台に出す。
- (5分)手を洗い、野菜から切る。
- (15分)煮込みに使う野菜を鍋に入れ、火にかける。
- (20分)肉を切る。煮込みに入れる分は鍋へ入れ、残りには下味をつける。
- (30分)肉を1回分ずつ袋に分け、空気を抜いて閉じる。
- (35分)月曜の分は冷蔵庫へ、水曜の分は冷凍庫へ入れる。
- (40分)できた煮込みを、浅い容器に小分けする。
- (45分)包丁とまな板を洗剤で洗い、熱湯をかける。
- (50分)あら熱が取れた煮込みを、冷凍庫へ入れる。
- (55分)容器に中身と日付を書き、冷蔵庫が詰まりすぎていないかを見る。
なぜ野菜が先で、生の肉があとなのでしょうか。厚生労働省の案内に、生の肉や魚を切った包丁やまな板を、洗わないまま生で食べる野菜や調理済みの食品に使わない、という項目があるからです。野菜から肉の順にしておけば、包丁やまな板を洗い直す手間も1回で済みます。肉を触ったあとの手洗いも、そのつど忘れずに。
煮込みは平日用に作るものですが、日曜の夕食にも少し出すと、作った日のうちに食べる分ができます。残りが平日用の冷凍分です。
週末60分の下ごしらえの段取りと、平日5日の回し方。作り置きと冷凍の安全の目安つき作成: 編集部 / 出典: 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」、農林水産省「冷蔵庫のかしこい使い方」ほか
作り置きと冷凍を安全に扱う目安
作り置きでいちばん気になるのは、「冷蔵庫に入れておけば何日大丈夫か」でしょう。実は、厚生労働省の6つのポイントにも、農林水産省の冷蔵庫の使い方の案内にも、その日数は書かれていません。農林水産省の案内にあるのは「冷蔵庫に保存した調理済みの食品は、なるべく早く食べきってしまいましょう」という一文。においや色、味では食中毒菌の量を判断できず、冷蔵庫のような低温でも増えたり毒素を作ったりする菌がいるからです。
市販の食品の期限も同じ考え方です。消費者庁の説明では、消費期限や賞味期限は、開けていない状態で決められた方法で保存した場合のもの。開封したら期限まで安全や品質が保たれるわけではなく、速やかに食べる必要があります。
だからこの記事の段取りでは、日数ではなく食べる日で分けました。翌日に食べる分は冷蔵、それより先の分は冷凍。迷ったら冷凍に回す、と覚えておくと判断が速くなります。
冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下
厚生労働省の「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」が示すめやすは、冷蔵庫が10℃以下、冷凍庫がマイナス15℃以下です。細菌の多くは10℃で増え方がゆっくりになり、マイナス15℃で増えるのが止まります。ただし、死ぬわけではありません。早めに使いきるように、と案内は続きます。
一方、農林水産省の案内には、あくまで目安としたうえで、冷蔵庫は4℃前後、冷凍室はマイナス18℃以下が適温といわれている、とありました。わが家の冷蔵庫が何度なのかは、庫内に温度計を置くと確かめられます。量は、厚生労働省のめやすでは7割程度まで。詰め込みすぎると冷えにくくなるためです。
煮込みは浅い容器に小分けして、早く冷ます
カレーや煮物のような煮込み料理で気をつけたいのが、ウェルシュ菌です。農林水産省によると、この菌は熱に強い芽胞を作るため、鍋で加熱しても生き残ることがあり、およそ12〜50℃で増えます。大量に作って鍋のまま置いておくと、冷めていく間に増えやすいのです。
農林水産省がすすめるのは、できるだけその日のうちに食べきることと、保存するなら小分けして早く冷ますこと。底の浅い平たい容器や保存用の袋に分けると、温度が早く下がります。あら熱が取れたら、すぐ冷蔵庫か冷凍庫へ。
解凍と温め直し
冷凍したものを、台所に出しっぱなしにして解凍していませんか。厚生労働省の案内では、室温で解凍すると食中毒菌が増える場合があるため、冷蔵庫の中か電子レンジを使います。水で解凍するときは、密閉できる容器に入れて流水で。使う分だけを解凍し、一度解凍したものは凍らせ直さないこと。たとえば水曜に使う肉なら、火曜の夜に冷凍庫から冷蔵庫へ移しておくと、帰ってすぐに調理できます。
温め直すときのめやすは75℃以上で、味噌汁やスープなら沸騰するまでです。手間に感じるかもしれませんが、とろみのある煮込みは、おたまで鍋底までかき混ぜながら中心まで温めます。肉を焼くときのめやすは、中心部が75℃で1分以上。厚生労働省の6つのポイントには、乳幼児は腸管出血性大腸菌による症状が重くなりやすく、加熱が十分でない肉を食べさせないほうが安全だという注意もありました。
お弁当に入れるとき
遠足の日や、学童で長い休みにお弁当が要る時期は、作り置きをお弁当に回したくなります。農林水産省の案内では、お弁当は当日の調理が基本です。前日に作ったものや残りものを詰める場合も、詰める直前に必ず十分に温め直すように、という案内でした。
温かいまま詰めると、ふたの内側に蒸気がこもって水分になり、傷む原因になります。冷ます時間を見込んで、朝は少し早めに温め直しておくと慌てません。
うまく回らない週の立て直し方
もちろん、型を決めても、残業や子どもの発熱で崩れる週はあるでしょう。そんなときは、予定していた曜日を「金曜の型」と入れ替えます。冷凍した分はそのまま次の日に回せるので、冷蔵の分を先に使えば、むだはほとんど出ません。
冷凍庫の中は、使う順に手前へ並べます。日付の古いものから使い、金曜には冷蔵庫を一度空に近づけておく。月曜を空いた冷蔵庫で迎えられると、週末の買い物と下ごしらえも組み立てやすくなるはずです。
実は、下ごしらえは家族で分けやすい家事でもあります。平日の夕方に台所に立てない人が、週末の1時間を受け持つ。そんな分け方なら、平日の負担を減らしながら2人で台所を回せます。分担の決め方や頼むときの言い方は、家事分担の話し合い方 名もなき家事の書き出しと頼み方の文例に文例つきで載せました。
19時の食卓に、温めるだけの一品が待っている。それだけで、帰り道の足取りは少し軽くなるはずです。
保存の温度や扱い方の目安は、2026年10月30日に各省庁のページで確認しました。